アプリコットな日々

気長にブログ始めてます。

2017年政界再編、衆議院解散総選挙に着想を得て当時書いたSF的な物語

今ちょっと、文藝春秋などを読んだりしているのですが、故安倍元総理がお話になられた回顧録なるものがそれぞれの記事の中で語られており、問題の箇所は、やはりモリカケ問題をめぐるくだりでありました。それぞれのお立場、ご関係から反論、検証がされていて、見立てを裏付ける内容で、大変よく納得できました。実は、そんなもりかけ問題追及の最中の2017年10月、当時の民主党が分裂し、小池百合子東京都知事希望の党を立ち上げ、政界再編という非常に大きな波が起こった時、それに着想を得て一つお話を書いたんです。この度の文藝春秋を読み、以前書いた文書を確認してみたら、なかなか読み応えがある。ここに掲載するに際し、いくつかの箇所を大幅にカット。返って、話として一つにまとまった。以下にその改編したものを掲載いたします。


既視感~デジャビュ

この世の不可解な現象を解決すべく結集された5名からなる、その名も『デジャビュ探索隊』。表向きはインターネット新聞を運営、その使命とは、過去へタイムトリップし、教訓を得て、現代に警鐘するというもの。この世の不可解な寓話的な現象は、過去のデジャビュであるとして、これは江戸時代のとある名もない易学者の書き記した仮説に基づき、過去、それも原始時代へタイムトリップし、その真相を確かめ、現代にその教訓を生かすというものだ。そもそも、なぜ原始時代かといえば、事の本質というものが分かりやすいからである。そこには寓話が満ちている。

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その目的の時代に行く方法は、こうである。まず、コンピューターに、今起きてる現象のひとコマをカメラに撮って転送するだけで良い。このコンピューターは、記憶を司る“鬟(みずら)の美しい”女神ムネーモシュネーに特殊な極秘のシグナルを発信する。すると瞬時にムネーモシュネーと彼らとの間にラポールが成立し、その“時”へと導かれるのだ。選ばれた5名のメンバーは特殊な被り物、カモフラージュ・ウエアラブル・グラスヘッドを装着。後は、8次元空間を通って瞬間移動。所定の時代へタイムトリップである。カモフラージュ・ウェアラブル・グラスヘッドを被っている部分だけ3次元空間に現れる仕組みだ。体は見えない。覚醒しながら、夢の世界を旅するようなものである。以下の体の部分は、現代にある。丁度頭だけ水に沈めて海中を見るようなものである。

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時あたかも、安辺総理大臣が国会冒頭衆議院の解散を宣言し、政界は動揺し、野党側では政党再編劇が始まった。民衆党は、党の代表が決まったばかりであったが、分裂という胚胎がいよいよ露呈し、離党者が相次いだ。一方小山都知事は、民衆党その他、保守色の濃い者までもが結集し新しい党を形成しつつあった。そして解散と知るや否や、小山都知事は国政選挙に進出するべく新党立ち上げに打って出た。すると、いよいよ民衆党は崩壊、事実上消滅し、それら議員達は、雪崩を打ったようにのぞみの党へと合流していったのであった。衆議院解散。北朝鮮情勢が緊迫している中でのことである。一体この国の運命や如何にーーー。

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我々は、空にいる。地上を見回すと其処には、250ヘクタールほどの拓けた土地があり、住居が立ち並んでいる。周りは深い森に囲まれ、川が流れ、大きな湖がある。もっと近づいていくと、人々の声、鳥のさえずりが鳴り響く。時代は今から10万年前である。ところは日本。

さて、女神の意思に従い、我々は核心へと導かれていく。

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集落の地面は、草1つ生えておらず、見るとあちらこちらで老女や子供達が屈んで、伸びてきた雑草を小まめにむしっている。

「彼処に一人老人がいるわ。恐らく長老の1人ね。ちょっと話を聞いてみましょうか。」

メンバーの音子は、麻の織物の着物をまとって、三次元空間へ抜けていき、老人のもとへ行った。老人は、別に不審がることもなく、淡々と話し始めた。

 

「事の発端は、カゴ職人とのずるいやりとりに始まった。カゴ職人は、総族長アンべの熱烈な支持者で、彼を崇拝しており、また教育熱心な男で、子供を集めて、アンベを賛美するよう子供に賛美の言葉を暗唱させていた。部族民の間にそれに不快感を示すものが少なからずいて、アンベとカゴ職人との関係を疑うようになった。カゴ職人は、アンべ崇拝を更に広める為土地が必要だった。しかし、集落の土地は限られている。そこに忖度が働き、あれよあれよと言う間に、いとも簡単に土地がカゴ職人の手に入ったのだった。アンべ夫人からは、細やかながら、真珠貝100キロ分が贈られた。真珠は装飾品に使われる他、その貝殻は、あるところでは、通貨として使われ始めている財貨でもあった。今は主に族長達の間でのみ流通しており、将来的に、部族民の間でも利用が見込まれているものだ。それを知った部族民達は、アンベ下ろしに躍起になった。また他に、アンベとは旧知の仲のカサンという人物にも忖度という形をとって、便宜が図られたことも明るみとなり、民衆の間にアンべ不審が広がった。集落の集会を開けば、この問題ばかり。このままではアンべ体制が保たない。アンベは、我こそはこの集落を治めるに相応しいとの強い使命感と執着があり、アンべ以下の重鎮を解任し新体制を作った。本来なら、集落民の信用を回復する為、その座をおり、もっとも相応しいものに譲るのが道理なのだが、アンベはそれをしなかった。しかもあろうことに、まだ批判の火種が治らないのを見て、集落会の解散を宣言したのであった。これは、全く不可解としか言いようがなかった。なぜなら、集落自体はアンべ支持で安定していたからだ。だからこそ、アンベは解散に踏み切ったのであった。しかし、逃げ切ることはできまい。それが今の混乱の原因である。」と老人は言った。「そしてまた、反体制派が分裂の兆しを見せ、森の首長の勢いが増しつつある中、形成が整わない今がチャンスと解散に打って出たものだろう。だとすれば、それは裏目に出たようじゃな。」

「では、これをどう収拾するのですか?何か決まり、習わしみたいなものはあるんですか?」と音子が聞く。

老人が答える。「昔は、武器で戦っていたが、その勝敗は、詰まるところ数によるものであった。そこで、血を流さずに済むので、数の多い方の勝ちとなった。これはわしの4代前の世代からの習わしとなっている。今ではどこの集落でもそうじゃよ。」

「なるほど。」と音子は感心して答える。「長老さま、お話を聞かせてもらってありがとう。ではお元気で、さようなら」と言って、音子は元来た木へ登り、木の葉の茂みに開いた8次元空間へと姿を消した。

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皆のところへ戻った音子は、今聞いた話を話して聞かせる。「なるほど、そういう事か」と皆納得。「正に、デジャビュね。」そしてまた、カモフラージュ・ウェアラブル・グラスヘッドを装着し、上空から彼らを窺う。

すると今度は、そのアンべが、取り巻きを引き連れ歩いてきた。彼は非常に若かった。それがなぜ総族長になれたのか。それは、優秀さ、そして人望によるものだった。彼は非常に弁がたった。議論して負けることはなかった。しかしそれが仇となったのだ。彼は過ちの認め方を知らなかった。常に、議論に勝つことしか念頭になかった。しかしこれでは片手落ちである。政治家は、必ずしも正直である必要はないのかもしれない。だが、こんな小さなことで、大きく動いた忖度をかばい、民衆に対し、大嘘をついたのだ。こんなことをやってのけられたのは、奢り以外の何物でもあるまい。それほどのことまでして守りたいものは、果たして、国か自分かーーー。

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「シャーマン反対!戦争の元凶だ!」

「いや、それは違う。シャーマンによって平和、集落防衛が成り立っているのだ。」

「そんなもの当てになるか。もし、間違いだったらどうするのだ。現に、爺さんの代に、戦争に巻き込まれ、多くの血が流されたではないか。その教訓を忘れてはいけない。シャーマンは、我々の平和の理念に反するものだ。戦争はちょっとした誤解、嘘から生まれる。」

「今は、その教訓から、シャーマン制度を改め、3人制にし、信頼性が確かなものとなっている。シャーマンの神託によって、この世の秩序は維持されているのだ。集落ごとのシャーマンの交信によって、お互いの情報伝達、情報共有がなされて、言葉が共通している所、疑心暗鬼になる事なく、友好な関係が保たれているのだ。」

「いや、ともかく、我々は断固反対の立場をとる。」

「フフフ、まるで、自民党社会党みたいね。自衛隊憲法違反だって。」

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「リーベラール、リーベラール」

「今度は何?地面に伏して礼拝しているわ。」

「静かに、、何やら議論が始まったわ。」

「我々の敵は、新人ジャポニカニズムである。ジャポニカニズムによって、世の中は、首長、慣習に支配され、生きにくくなった。我々は、自由を求める。よって、我々の最終目的は、体制の打破である。体制を打破し、ジャポニカニズムを消滅し、そこで、我々は、自由に、平和に、何の束縛もなく気ままに暮らすのだ。」

「君らの何処に一体、自由、平和があるのかね?そんな自覚もないものとは議論しても無駄だがね、一言言わせて貰えば、三代前ならいざ知らず、我々は戦争を経験して、君達を束縛していた制度を廃止し、自由になったではないか。この上、何を解放すれと言うのだね?良からぬ制度は廃止していく。何もそれを押し付けるのが私達のスタンスではない。君たちの自由とやらを真に受けるわけにはいかないが、勿論、民衆の間に純粋な自由を求める意見もあるだろう。それは、寧ろ、我々は歓迎をする。それこそ、真の進歩である。我々は、保守ではあるが、決して進歩を否定するものではない。ただ、君らが単に、我々を打倒せんが為に向かってくるから、手を焼いているのだよ。わかったかね?君達は、リベラルという羊の皮を被った狼だ。自由を自由をと、最もらしく叫ぶのはやめなさい。」

「世界は進歩をしていく。それを突き動かしているのは我々の原動力によるものだ。君達は滅び行く運命にあるのだ。我々は、常に新しいものを追求していく。我々は古い伝統、しきたりを嫌う。」

「君達の存在価値というものは、既存の体制、伝統があってのもので、それがなければ、ただの身勝手な嘘つきとなろう。君たちの行動は、ただの破壊である。非常に危険だ。その先にあるものは、無秩序、そして、独裁となるだろう。一体、何処の国の者たちかと非常に疑問に思う。信用ならない。いっそのこと猿の方が余程ましである。」

「猿の方がだと?まあいい。兎も角それは、これからのお楽しみだ。覚えてろ!」

「もう一言付け加えさせて貰えば、我々は、リベラル、自由というものを否定する者ではない。それは、我々の内にあってこそ生きるものである。君達に何の未来があるものか!」

旧人、新人からなる民衆達は、旧人、新人に割れることなく混然としていた。しかし、人々はまだ、しきたり、風習を重んじていた。だから、旧人の意見は劣勢だった。

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「すごい議論だったわね。」

「今も昔も同じね。それが今ハッキリしてきている。国乱れて忠臣明(あらわ)るだわ。」

「この後は、どうなるのかしら?」

「数の多い方の勝ちさ。」

「さあ、私達の世界のこの現象は、どういう結果になるものやら。」

北朝鮮のミサイル問題もあるし、予断は許されない情勢ではあるからな。」

「選挙の結果より、そっちの方が気になるわ。」

「本来ならね。こんなことやってる場合じゃなかったんだろうけどね。」

「まあ、ここにも、隕石落ちることだってあるんだから、同じようなものか。ハハハ」

「そうね。フフフ」

夢はこれまで。開いた時空は閉じられ、今回の探索は終了する。

 

2017年10月 鳥子